〜今月の名言 〜　卯月

『励ましを受けて育った子は自信を持つ』

「アメリカインディアンの教え」（扶桑社文庫）より
If a child lives with encouragement, He learns confidence.

励ますことのむずかしさ

アメリカの実業家で作家、ビジネスセミナーの講師として有名なデール・カーネギーの著書に、地上最大の小売業者になったウールワースの事が書かれています。それによると、彼は一年の半分を裸足で過ごす貧乏な農夫だったそうです。
２１歳の時に自分の店を持ちたいと、馬にソリを引かせてニューヨーク州に出かけています。もちろん彼を雇ってくれる店は一軒もありませんでした。しかし、奴隷扱いのようなむごい扱いにも耐えて、彼はしっかりと生き続けました。
そしてさんざん苦労して失敗を重ねて自信を失っている時に、彼の母は彼を抱きしめて言いました。
　 「絶望しては駄目だよ。いつかはお金持ちになれるからね」と言ったそうです。
この励ましが彼の自信を育てたのでしょう。またこんな母親は、子供がもしお金持ちになれなくても、それはそれで立派であると信じて、息子を励ませる親です。

さて、彼は初めは食料品を仕入れておく貨物倉庫に雇ってもらいます。それでも給料は払ってもらえません。払ってもらえるようになっても時給３セントで１日１５時間こき使われました。やがて彼はあるアイデアをつかんで、銀行から借金をしますが失敗してしまいます。そのような中で母の励ましがどれほど彼を支えたでしょう。母は彼が成功しても失敗しても、心から大切に思っていたに違いありません。 またマックギニスの著書には、ある女性歌手のことが書かれています。彼女はニューヨークのタウンホールで早すぎるデビューをした黒人歌手でしたが、批評家たちは彼女のことを酷評しました。彼女は恥にまみれて故郷のフィラデルフィアへ帰り、その失意は１年以上続きました。しかし、彼女の母は彼女を励まし続けました。そんなある午後の日の励ましの言葉が、彼女の心を深く動かしました。「マリアン、素直な心がなければ偉大な人にはなれないわ。失敗をくよくよするかわりに、うんとお祈りしてはどう？」そしてこの偉大な声楽家は当時を振り返ってこう語っています。「私の声がどうであれ、信じる気持ちが私をあそこまで支えたのです。信じる気持ちと素直な心がなければ偉大な人にはなれないわ、と言った母の言葉が」。

本当に励ましが必要なのは、失敗した時です。しかし、励ましが必要な時に人はその人の側から逃げていき、励ましが必要でない時にその人のもとに寄ってくることが多いのです。ここに例にあがった母親たちは、皆が子供から逃げていく時にこそ子供をそばで励ましました。励ますことはやさしいでしょう。難しいのは、それが必要な時に励ますことです。親戚や周りの人間を見返すために、自慢するために、我が子を有名校に入るよう「励ます」親は、子供が失敗した時には子供を憎むようにさえなります。母なるものは、自分が自分になることを喜び、子供を助け励ましてくれるものでしょう。「私はいつでもここにいる。さあ、行きなさい」といつでも帰ってこられるところのある安心感を与えてくれるものです。


高校受験、大学受験…春を迎えるまでに今年も様々なドラマがあったと思います。必死で頑張ったのに悔し涙を流した人、無事に合格できた人。その一人ひとりを支える家族がいて、どのような結果であれ、その一人ひとりの今を全身全霊で受け止めてやらなければいけないのが母親です。合格した時よりも、むしろ失敗した時に、どんな言葉をかけてやったらよいのか…黙って見守ってやるのがいいのか。自分自身も落ち込みそうになるのを堪えてどう接してやることが励ましになるのか。励ますことは、本当に難しいと思います。


「どんな時でも私がここに居る。どんな時でも、どんな姿になったあなたでもすべて私が受け止める。だから勇気を持って心の求めるままに飛んでおゆき」。しかし、本当に勇気と強い心が必要なのは、飛び立つ子よりも母親の方なのかもしれませんね。


そんな風に我が子を果てしなく拡がる大空へ飛べ立たせてやりたいと、そう願う桜の春です。

終わり ――― 次月をお楽しみに!!